君の名は。

フィリップです。

 

表題の作品をやっとこさ観てきたので感想をここにつらつらとメモ。当然ながらネタバレを大いに含むのでご注意を。

 

映像

アニメ映画としては特に珍しくもないが、いわゆる「カメラアイ」を意識した映像作りがされていたように思った。加えて新海監督本人があちこちで述べていた通り、光の描写に凝っていると感じる箇所が散見。つまり「カメラを通した光の見え方」が多用されることで、より「映画としての臨場感」を演出しているのだろうなあと。

ここでの「映画としての臨場感」とは平たく言えば「実写映画っぽさ」であり、アニメーションなのに実写映画を観ている=カメラで撮った映像であるかのような感覚を味わえる仕組みが施されている。それどころかアニメーションであるため本来の実写では撮影不可能な光・アングル・カメラワークをフレーム内に捉えることができ、リアリズム追求というよりはむしろ表現主義への傾倒を読み取ることができそうである。そも映画論的表現主義の極致はアニメーションとされることが多々あるので、それはそれで自然なことではあるが。

 

脚本

個人的には率直に面白かった、と言えるものだったと思う。瀧と三葉それぞれの視点で繰り広げられる入れ替わりの物語の接合部を上手く「夢オチの連続」としているあたりは見ていてとても小気味良かったし、テンポの緩急、少し前の描写を意識して踏襲していく話の運び方もわかりやすさがきちんと追随していて、エンターテイメント作品としての心得を感じた。

そしてシンプルに三葉ちゃんが可愛かった。こんなフィールドで乳揉みとかパンチラパンモロとかしていいものなのかハラハラもしたが、眼福だったので良し。清潔感溢れる女の子だったので「来世は都会のイケメン男子にしてくださーい!」と叫んだ時には妙なギャップと親近感を覚えた。

 

それらとは別に包括的な話をすれば、確かにものすごく面白くはあるのだがどうも恋愛の要素を抜きにしても語れる物語ではあるので、その分「エモさ」からは離れる作品であるとは思う。もちろん理由付けなどせず恋愛感情を「できるもの」ではなく「あるもの」として捉えられれば些末なことなのだが(恋愛経験の少ないオタクにはこのへんが難しかったりする)。誤解してほしくないのは、ぼくはそれとはまた別に恋にときめく三葉ちゃんは大好きだということ。可愛いわバカ。

 

音楽

ぼくは映画論の講義で未だに音声関係の話に踏み込まれていないことを不思議に思っているのだが、それはそれとして「音楽 RADWIMPS」というクレジットはとても新鮮だった。たいていのアニメでの音楽担当といえば某S・H氏やI・T氏のように個人名が挙げられることがほとんどだが、それに対してバンド名でクレジットするということはバンド全体で劇中音楽に携わっているということであり、確かに聞いていて「ああRADだな」と感じさせるバンドサウンド基盤のBGMは多い。そしてRADの曲はガンガンかかる。特に目を瞠るのは、TV放送をするアニメを踏襲するかのようにオープニングムービーが用意されていたことだ。いや、忘れているだけで過去の新海作品にもこんな感じのものがあった気がしなくもないが、それでもここまで強烈に残るOPは後にも先にもこれだけかなあと思わせるくらいのものだった。これ以上言語化すると野暮なのでこんなもので。

 

あと言うなれば、神木くんすげえ!!

f:id:phillip_pkmn:20160915194752j:plain

FGO夏祭り2016、秋葉原。

7月30日早朝。

 

 

 

 

 

 

 

 

に家を出るはずが、モンスターエナジー緑を飲んで楽しい楽しい☆5確定ガチャを回してバーサーカー金演出に「ヴラド重複勘弁!!!!!!!」「オルタニキきたあああああああああああああ」と乱痴気騒ぎをした挙句パタリと寝落ちしたので、8:00頃の出発となりました。仕方ない。てかエナジードリンク飲んだ夜に寝るってカフェイン耐性付きすぎですね。何かの拍子で死に至りそう。

 
f:id:phillip_pkmn:20160805105454j:image

 

絶起直後Twitterを弄っていたらもう列に140人ほどいますとの報告ツイートを見かけ、目が一気に覚めました。大急ぎで支度をして家を飛び出し、電車内で汗だく。オタク。

 

 

1時間ほど電車に揺られ、秋葉原駅に到着。改札へ急ぐ途中に何やら怪しげな展示を発見。 #バレバレだろ!


f:id:phillip_pkmn:20160804205607j:image

 

UDXに到着すると、結構な後ろの位置から並ばされてしまった。 なんか浴衣姿の女性も並んでて気合入ってるなあと。ぼくの隣は察しオタクでした。


f:id:phillip_pkmn:20160804205627j:image

 

列がUDX外周に突入した時にガラス張りの壁に貼られていたポスター。1周年記念ムックもそうですが結構細部までイラストが見られたのでそれだけでもどこか嬉しい。めっちゃ暑かったけど。行きに買ったポカリ2本はここで余裕で飲み干しました。

 

そして列はいよいよスクエア内に。 

 

な、なんだあれは…!?

 
f:id:phillip_pkmn:20160804205652j:image

 

と、遠方に気を取られていたらめちゃめちゃ面白い看板が目に飛び込んできました。この与太話になり切れない与太話という感じがなんとも…


f:id:phillip_pkmn:20160804205702j:image

 

景品は福引きによくあるあのガラガラで決められるんですけど、ぼくはオルタすくい(救い)でした。下手すぎて一つも取れず、お姉さんにセイバーオルタと乳上まけてもらいました。普通に情けない。

 
f:id:phillip_pkmn:20160804205729j:image

 

かなしみを背負ってブースを外れると、なんとあの正体はウィッカーマンだった!!!!俺達の課金の結晶!!!!

 

その後は愉快な愉快なカルデアの仲間達の屋台が構えられていました。お面はちょっと欲しかった。 


f:id:phillip_pkmn:20160804205741j:image

 
f:id:phillip_pkmn:20160804205752j:image

 

そしてこの後は今日のイベントのもう半分、アキハバラレイシフトスタンプラリー へと。

 

いざアキバの街へと繰り出すと、そこはもうFGOに染まっていました。


f:id:phillip_pkmn:20160804205807j:image

 

そしてまあ「スタンプラリーだからゆっくりやろう」との気持ちではいたんですが、数量が限られているとかそんな書かれ方されたら焦るに決まってるじゃない!!!と我儘を反芻しながら、スタンプラリーに鬼のようにできた列にバカ正直にも並び始めました。

 

結果として、スタンプ1つにつき、だいたい90分くらい並ばされました。いやはや自ら生み出すコンテンツの価値・人気をイマイチ計れてないのは同人っ気が抜けていないというか、集客数の予想を明らかに踏み違えてるでしょこれ。なんでスタンプラリーで並ぶんだよ。

 
f:id:phillip_pkmn:20160804205826j:image

 

とまあ文句もほどほどに垂れつつ結局はその日のうちに達成。最後の方は「俺は生きる!!!!」みたいな暗示を掛けながら、炎天下の中並んでいました。なんか後日並ばないでヒョヒョイっとできたよ〜みたいなレポも見たけど俺の心は傷ついてないぞ。うん。

 

f:id:phillip_pkmn:20160804205838j:image

 

その後、自らへの労いを込めて友人に教えてもらったラーメン屋「ばんから」へ足を運びました。写真は味玉ばんから。実は16:00頃のこの時点で、まだ昼飯を1つも口にしていなかった。よく生きたよ俺。

 

角煮ラーメンと称されるだけあってドロドロと牛脂が入っていて、またスープも濃厚で麺によく絡んで美味しい。あとお好みでプレス機にてテーブルに常置されているニンニクを潰して入れることも可能で、なかなか強い香りが引き立ちます。

 

腹ごしらえも済み、気づけばもう夕方。いつもならもっと1人でフラフラして遊んでたところですが、流石にこの日は疲れ果てました。文字通り搾り取られた感じ。

 

そして帰りの秋葉原駅の構内にはなんと、朝に見かけた謎展示()の正体が…!


f:id:phillip_pkmn:20160804205902j:image

 

中央のエクスカリバー、右のマシュの盾とはFGP以来の2度目の対面でした。相変わらずカッコいい。

 

FGPのレポート記事

http://atagohiroe.hatenablog.com/entry/2016/05/24/194500

 
f:id:phillip_pkmn:20160804205915j:image

 

何はともあれ総括すると楽しいお祭りでした!アキバの街にはお面をしたオタクやエクスカリバルーンを携えたオタクが恥ずかしげもなく跳梁跋扈しているのを見ると、街全体が縁日のようで、スタンプの場所を探しに歩いているだけでも楽しい気分になれました。

 

実はこの後、出すはずだったレポートを出し忘れた。
f:id:phillip_pkmn:20160804205946j:image

Fate/Grand Party in HARAJUKUに行ってきた。

最近は専らFateオタクなので散財先も、ものを書く菌糸類と、キャラを描き分けようとしない社長と、あと不具合そっちのけでステーキ食べるプロデューサーくらいしかありません。どんどん美味いもの食ってくれ庄司。


今日は1限2限と大学の講義をこなしてから、そのまま原宿に向かってFGPを楽しむ予定でした。先に言ってしまうとほぼほぼ予定通りで終息。



実は今回が、人生初の原宿上陸。どこを見回してもごっつオシャレで、ついつい目的地も確認せずに散歩をしてしまいました。なんか『アリス』モチーフの小さい扉だけ開いたカフェなんかもあってすごかった。うん。


散策も程々にキュープラザ原宿へ向かうと、そこには待機列看板。まだ一時間以上空いているのに先頭に陣取ってガン飛ばしてました。ごめんなさい。

f:id:phillip_pkmn:20160524180132j:image

僕の後ろに並んでいくのはほとんど女性で、「え、Fateタイトルってそんな女性ウケいいの?」と軽くカルチャーショックを受けてしまいました。まあ昨今の魅力的な男性サーヴァントの増加からして自然っちゃ自然なのかもしれない。もう女体化して男に媚びを売らなきゃならない時代は終わったんやな、きのこ。


待つこと一時間。15:30、折れそうな腰のまま会場へ入ると、いきなり大きなイラストパネル2枚がお出迎え。

f:id:phillip_pkmn:20160524180752j:image


f:id:phillip_pkmn:20160524180800j:image


前期の参戦なので、冬木~セプテムまでの主要サーヴァントの集合絵です。後期も行きたかったけど普通にチケ取れませんでした。かなしい。


一番乗りで指定の席に座ると、なんと目の前には2人のローマ皇帝が!!!

f:id:phillip_pkmn:20160524181219j:image

そうか、ここがローマか…ローマは永遠也、全ての道はローマに通ず…


f:id:phillip_pkmn:20160524190212j:image

てなノリで赤セイバーのドリンクを注文。この花弁が散りばめてあるのがとてもネロらしくて良い。コースターはアルジュナでした。

f:id:phillip_pkmn:20160524190344j:image

せっかくなのでフードも注文。普通に美味しいのり弁でした。オルタが食べるには少々上品め?


で、この後は大きな目的の一つ、「公開霊基召喚」に臨みました。いでよライオン丸…!


f:id:phillip_pkmn:20160524190614j:image


コフッ(おき太風吐血)

まあそうそう簡単に来てくれるもんじゃないですよね。

なんかここで自棄になり、ドリンクの引き換え券を貰っていたにも関わらず、ジャンヌオルタのドリンクを現金で注文しました。

f:id:phillip_pkmn:20160524191612j:image

ジャンヌ…!

まるで陰と陽を補完し合うように来てくれました。嬉しさのあまり一瞬で飲み干したよ。

その後はグッズを買ったり、展示物を色々と眺めたりして楽しみました。


f:id:phillip_pkmn:20160524190832j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524190844j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524190909j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524190947j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524191003j:image
(↑アホ毛が入り込んでるのかわいい)

f:id:phillip_pkmn:20160524191104j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524191049j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524191228j:image

f:id:phillip_pkmn:20160524191148j:image

2時間があっという間に感じるほど楽しい空間でした。来年もこういうイベントないかな〜と期待しつつ、明日やってくるであろう新規ガチャに身構える家路でした。


つか、明日も1限。

f:id:phillip_pkmn:20160524191446j:image

某有名ネット小説サイトでランキング1位だった小説が気に食わなかった話。

あ、ブログお引越ししましたフィリップです。なんか前のは色々とジャンルが錯綜してて収拾がつかないのでこちらでひと段落着かせようかと。

 
 
 
某有名ネット小説サイトというのは察していただくとして、少し前に受験終わりの緩んだ脳ミソでTwitterを弄ってたら
 
「あかん、この俺TUEEEE小説ツッコミどころありすぎておもろいわ〜」
 
って話題になりまして、僕自身もそういうオナニー小説を玩具に何かできないかな〜と考えた挙句、記事を書くって方法に至りまして。
 
でまあ、その某有名ネット小説サイトを覗いたんですよ。そこのランキングを見たら
 
f:id:phillip_pkmn:20160301220134p:image
 

3位2位は置いとくとして1位なんやこれ。タイトル長すぎちゃう。はい玩具決定〜どう料理しようかな〜

 
 
まずはあらすじから。
 
 
異世界に召喚されたナギが手に入れたのは、「スキルを組み替えることのできる」スキルだった。
 
 
まあ導入はこんなもんだろう。この手のジャンルにひとえに言えることだが、この「異世界召喚」やら「スキル」やらが当たり前のように共通言語として用いられている状況が、おじさん的には気後れする。この時点で読者層をかなり狭めていると言えるし、作品として非常に没個性と言わざるを得ない。外野からすれば「誰が主人公を異世界から召喚したのか」とか異世界の成り立ちというのが明らかにされないまま導入でこの事実が述べられるのは、はっきり言って気持ち悪さしかないと思う。「異世界転生ものですw」って一言で片付けられてしまう言わばプレーンな設定が暗黙のうちに共有されてて、そこからちょいちょいアレンジしていけばいいとはそりゃ文化も廃れていきますよ。実際廃れてるかは知らんけど。
 
 
「魔王を倒せ」という王様からの依頼に、ブラックな仕事の気配を感じたナギは城を出て、奴隷の少女とともに旅を始める。
 
 
ブラックな仕事の気配って何やねん。そもそも異世界から召喚されただけで王に会えるのかってのも疑問だし何より唐突すぎますね。おじさんは困惑してるぞ。あと偏見だが奴隷の少女ってのも取って付けた感がハンパない。せめて「途中で助けた奴隷の少女」って書いてくれないかな。
 
 
同人ゲームを作っていた経験から、システムを理解するのはお手の物。使えないスキルを組み替えて、ナギは新たなスキルを作り出す。目指すは究極の「働かなくても生きられるスキル」 
 
 
そっかあ、同人ゲーム作ってたのかあ。同人ゲーム作ってたただのオタクの少年が何故異世界から招聘されるのかよく解らない。同じ少年なら、普通ラグビーインターハイとかで活躍してるガッチリした男子高校生呼べばいいんじゃないかと思うけどね。
 
で、この「スキルを組み替えるスキル」ですよ。めだかボックスか。まずスキルをメタ的な視点で俯瞰するスキルなんだから、そのスキルの定義が曖昧じゃおじさんはまたも困惑するぞ。「火のスキル」「氷のスキル」って具合に横並びの相対化がされてた方が、まだ設定としてすんなり頭に入ってくる。
 
 
まずは冒険者ギルドに登録するため、王都を出ようとするナギたちだったが……。 「第1章『スキル・ストラクチャー発現編』」連載中です。
 
 
何のために「冒険者ギルドに登録する」のか。薄々感づいていたけど、この子因果関係結ぶの下手すぎる。これじゃこういう作風()のノリが解ってる層でも流石に首を傾げないか。あとこの「冒険者ギルド」ってのに登録?するために都を出なきゃいけないのも釈然としない。ギルドってのは中世ヨーロッパの商人ギルドを引っ張ってくるなら、寧ろ都市を形成する共同体なんだがね。
 
 
次に本編全部をなぞる訳にはいかないので、第1話前半だけ。全部引用すると長くもあるので抽出してツッコミます。
 
 
学校行く途中で乗ってたバスが事故ったと思ったら視界が真っ白になって、乗客全員まとめて異世界に召喚された。
 
 
相変わらず唐突ね。「この現実を受け入れろ」って提示は主人公にだけで十分です。
 
 
 
……悩んでもしょうがない。状況を確認しよう。
 
 
この意思だけで必要な情報が次に羅列されていることがとっても不自然。もちろん一般の小説にもこんな感じの省略の仕方はあるが、せめて情報収集する描写を加えないと異世界に来た臨場感が全くない。ネットでも繋がってんの?
 
 
疲れました、このへんにしとこう。逃げと捉えるかは読者様次第ということで。

結局総括して僕が書きたいのは、なぜこんな文章力の未成熟なキッズがその文章力の成熟を待てないくらいに、このジャンルはキッズを惹き付けるのか?、ってところなんですね。


・お手軽さ

もはや剣と魔法のファンタジーがお約束になっている異世界もの。お約束だからこそ大まかな設定だったりは省略ができる。つまりとっても楽。重厚なものを作品も作者も抱えることなく書けてしまうことは利点でもあるのだろうが、結果こうして楽さが全体のクオリティの低下に結びついてもいる。


・差別化

こうしてこのジャンルの作者人口や作品数が過多になってくると、どうしても細かいところで差別化を図らなければならない…とは必ずしもならないのがこの「異世界ファンタジー」の特徴。先にも書いたが「お約束」であるため、需要の核がその「お約束」を的確になぞることそのものにすり替わることがあるからだ。文章を読むだけでドラクエをプレイした気になれればそれでいいみたいな感覚。本人はそれでいいかもしれないが、小説という媒体に拘りを持って書いている作者からは怒りを買いそうだ。外野の僕はかなり怒っている。非常に身勝手だが。

勿論、真正面から差別化に力を注ぎ、素晴らしい作品に仕上がっているものも世には多い。一方で先述した「お約束」を楽しむのもそれはそれでアリだろう(僕自身はそんな脳を腐らせるようなものの読み方はしたくないが)。事実、世界観を共有し、複数人の違った視点で物語を作る面白味は、TRPG旧約聖書で既に証明されている。

f:id:phillip_pkmn:20160322185747j:image


・二次創作からの逃げ

だがこの「異世界ファンタジー」の風潮のいけないところは、この世界観の共有がとても曖昧な為され方をしているところ。オリジナル作品を書こうと思えば、それは独自の世界観を自力で組み上げなければならない。これはとても労力が要るし、うまく作れたとしても、文章を通して読者に伝えることもなかなか難しい。僕はここまで、このへんを大股でスキップできてしまうのがこのジャンルの特異な点である、と書いてきた。これは正確には「どこかの世界観を借りてオリジナル作品が書ける」ということで、実はいわゆる二次創作スレスレのラインだ。

正当な二次創作ならば、堂々と世界観を借りていることをタイトルなりで表現ができる。その代償として、どこまでクオリティが高くてもオリジナル作品にはなり得ないという枷がはめられる(枷と捉えるかどうかは勿論個人の問題だが)。

自分だけの作品を作りたい、という欲求はとても健全なもので誰もが持っているものだし、認めざるを得ない。だからといって楽をしようとすると、こうした醜悪な文章になってしまう。お前のアイデンティティはそんなものかと怒鳴りつけて泣かしてやりたいみたいなガキ大将根性は抑えておくとして、やはりオリジナルの言葉の意味を考えれば、こんなものがオリジナル作品を標榜していいものなのかという疑問が残るのが感想だった。


f:id:phillip_pkmn:20160322173732j:image

確かに自分の大好きな作品に触れて、自らにも創作意欲が湧いてくるのはままあることだろう。これもまた普通の感覚であると思うし、現状僕自身もそういった衝動に近いものでこの記事を書いている。ただ二次創作から逃げようとしてはいけない。とある素晴らしい作品を読んで(観て)、その世界観の内側に入りたいと思うなら正直にそうすべきだが、中には「こういった作品を自分の手でも作ってチヤホヤされたい」みたいな欲望を抱く輩もいるだろう。解らなくもないがそれは完全に羨望、もっと言えば嫉妬であり、そんな汚れた気持ちで作品を作ってもいいものにはならないと思う。

f:id:phillip_pkmn:20160322154911j:image

ただ寧ろ、人間の原罪とさえ呼ばれる嫉妬の捌け口がこういった、気にも留めないと目には入ってこない場所になっていることは僥倖かもしれない。僕だって傲慢さ故にこんな文章を書いてるんだから、どこまで行っても同列である。


・自己投影

そしてこういった作品に限らず最近見られがちなのが、主人公が強すぎるストーリーである。本当にお話が成立しないほど強い力を最初から持った主人公は、恐らく作者の願望の影響を強く受けているのだろうと感じるのは、やはり自分自身力不足でどうにもならないことが現実に多いと感じることに起因する。

f:id:phillip_pkmn:20160322174929j:image

確かに強大な力で困難な状況を打開してくれる存在は頼もしい。しかしそれが物語の展開に於いて面白いかというと、寧ろつまらない部類に入るだろうと僕は思っている。じゃあ逆に何を面白いと言うのかというのは、その逆、弱いなりに努力を積み重ね、ジャイアントキリングを果たすような主人公の話だ。自分こそ平凡どころか才能に恵まれないプランクトンだとつくづく感じているから、同じような立場から地続きの努力でも勝ち上がっていける様にこそ憧れを抱く。

作者が主人公に自己投影をするのは割とよくある話だが、それは元来等身大で自嘲的なもので、自らの醜い欲望を晒すものではないと思う。共感を得ようとしているならまだ理解出来るが、それにしたってフィクションにリアリティを持たせる面白味は完全に欠けることとなる。

まあこの領域の話は単に「俺TUEEEEはただのオナニー」というだけなので、それを好むか好まざるかというところに帰結する。俺は面白い小説が好きだよ。

・文章力

そして最後に何より、しっかりと地に足の付いた文で物語を書けることが大事であろう。こればかりは地道な努力が必要であるし、恥ずかしながら同じことが自分にも言える。拙文ですみません。

書店で平積みになっているライトノベルを開いてみても、中には変な日本語で書かれていているものが混じっていて首を傾げたものだが、やはり売り物であるからにはビジネスであり、裏を返せば、極論売れれば何だっていいのだ。読者層を鑑みて多少間違った日本語であっても構わず売れてくれることが見抜けている、と逆に言うことができる。

だが勿論、曲がりなりにも文系男子を名乗る僕からすればこれは商業主義の生んでしまった文化の癌であり、早急に摘出すべきだと感じている。完璧にフォーマルな日本語にすべきとは言わないが、あまりに間違った日本語が濫用されれば、間接的に読者層であるところの中高生の文章読解能力に悪影響を及ぼしかねない。連呼している「間違った日本語」というのは、突然熟語をカタカナ英語で読み始めたり、実用性の無い造語の連発であったり、枚挙に暇が無いがそういったものである。そういったものを間違ったもの、わざと間違えているものときちんと認識できていれば問題はないのだろうが、残念ながらオタクは基本ライトノベルくらいしか興味を持って読まない。一般的な小説に寧ろ変な反発を覚えているから、彼らの中での「小説」とはそういうものになってしまいがちである。

かなり保守的な考え方だと自分でも感じているが、それでも素晴らしい絵画が安物のペンキで嘲笑うかのように上塗りされていくのは、その絵画を楽しんでいた人間としては許せないのだ。


f:id:phillip_pkmn:20160322201250j:image

こういった愚行が商業で行われているからこそ、このようにネット小説においても文章力と形容できるものを育て切れていないような文章が、恥ずかしげもなくアップロードされているのだろう。端的に言って嫌いだ。きちんと日本語を勉強している全ての人間に対して失礼極まる。相手が外国人なら尚更。せめて西尾維新にでも憧れて、厨二病を拗らせて文章中で韻でも踏みまくってくれていたら、まだ面白く読めるかもしれない。勿論それはどちらかと言うと詩的な面白さだが。


以上、オタクの喚きでした。今回はなんかヘイト吐くだけで終わったので次回は明るい記事が書きたいですね。

f:id:phillip_pkmn:20160322201948j:image